
-:--:-プロフィール-:--:--:-
1962年大阪府生まれ。早稲田大学在学中より、歌人佐佐木幸綱氏の影響を受けて短歌を始める。1986年作品「八月の朝」で32回角川短歌賞受賞。1987年、第一歌集「サラダ記念日」を出版、260万部を越えるベストセラーになる。1988年、「サラダ記念日」で第32回現代歌人協会賞受賞。2004年、評論『愛する源氏物語」で第14回紫式部文学賞受賞。第四歌集「プーさんの鼻」(文藝春秋)で2006年 第11回若山牧水賞受賞。歌集の他、小説『トリアングル』、エッセイ『あなたと読む恋の歌百首』、『百人一酒』など著者多数。
東京に住んでいた頃は、規則正しい生活をしていたものの、起きるのは決まって昼近くだったんです。 仙台で生活するようになって一年が過ぎて、やっと朝らしい朝を迎えられるようになりました。今、子どもが幼稚園に通っていることもあり、平日は6時30分くらいに、休みの日はゆっくりと7時30分くらいに起きています。
私が仙台の朝と聞いてイメージするのは「仙台朝市」。海の幸、山の幸ともに豊富な土地だからこそ開かれているこの朝市は、東京では体験できない仙台ならではの朝のスタイルだと思います。よく観光客向けに開催される朝市がありますが、仙台朝市の場合は市民の生活にとても根づいていますよね。 市内に住んでいる私の叔母も、仙台朝市で買った新鮮な野菜をよく届けてくれるんです。
子どもの頃から朝ごはんは欠かさなかった私にとって、半熟のゆで卵とトマトジュースが毎朝のメニュー。これらは昔からずっと食べ続けてきた俵家の朝の定番です。
特にうちの家族は、ゆで卵に強いこだわりがあるんです。父は柔らかめ、母は固め、私は半熟と、黄身の固さの好みがみんなバラバラ。母は各々の好みに合わせて、ひとつの鍋で上手にゆで分けていました。私自身も小さい頃から母の手伝いをしていたので、ゆで卵作りは得意なんです。でも以前、料理雑誌に出た時に「ひとつの鍋で卵をゆで分けてみせます」と言っておきながら、失敗してすべて固ゆでの卵になったことがありました。家では使わないような撮影用の大きな鍋だったことが失敗の理由だと思いますが、普段、家で卵をゆでている時は「今、このぐらいの固さかな?」と、だいたいの感覚でわかりますね。私にとってのゆで卵は、それだけ思い入れのある朝メニュー。そんな私の影響もあって、息子も半熟のゆで卵が大好きなんです。
毎朝同じ電車に乗るため、いつも時間ピッタリに駅へ到着。たまに少し早く着いた時、ホームでふと誰かのことを考える。そんな“すきま”のような時間に、ある人のことを思った時の歌。一日のうちで、朝は最も時の流れを意識する時間帯。だからこそ、一分の重みを味わうことができる。
―「サラダ記念日」より

今振り返ってみると、朝に関する歌が意外と多いように感じます。私の考える朝は、季節を感じる時間。目に見えない、肌で感じる季節感が朝にはありますし、一日の中でその時しか感じることのできない独特の空気感というものもありますね。
また私の中に「朝ごはんは特別なもの」という意識があります。一日のスタートに欠かせない食事という意味もありますが、個々のスタイルがはっきりと出やすいパーソナルな食事だと思うからです。朝ごはんの場合、例えばごはん、みそ汁、納豆というように、だいたい食べるものが固定されていますよね。それに昼ごはんや夜ごはんを知人と一緒に食べに行く人はたくさんいても、朝ごはんを一緒に食べる人は家族や恋人、一緒に旅行する友だちなど、大切な存在の人ばかり。一日に3度ある食事に中で、実は朝ごはんが一番大切にしなければいけない食事だと思うんです。
いつもの時間に起き、いつもの朝ごはんを食べ、いつも会う人に「おはよう」と言う。そんな「ごく普通の朝」が私の考える理想の朝。毎日当たり前のように朝を迎えられることは、本当に幸せだと思うんです。普段の生活では忘れてしまいがちですが、朝が来ることの喜びを改めてかみしめてみるのもいいかもしれませんね。